もう一つびっくりしたのは、日本で見てきた病気が
途上国にはあまりなかったことです。

特にがん患者はいませんでした。もちろんCTスキャンも病理検査もできないですから、
本当に全てのがんがなかったかどうかはわかりません。

でも、表面に出てくる、骨肉腫や乳がん、皮膚がんといった
がんの患者さんは全くいませんでした。

先日ある学会でお話した時に、大学の先生も、
「皆無とは言わないが、昔はほとんどがん患者はいなかった」
と言ってました。本当に少なかったんだろうと思います。

じゃあ、どんな人が多かったかというと…
風邪・頭痛・腹痛・胃痛・下痢・尿路感染症・骨折・火傷など、
昔からある病気です。

一方…
水疱瘡・おたふく・喘息もアトピーも自閉症もありませんでした。
アトピー






では、途上国と私たちの暮らしの何が違っていたのでしょうか。

途上国ではほとんどの人が昔からの伝統食を食べていました。
伝統食を食べていれば、体がその土地に適応するんです。

モルディブはカレー文化の国です。
その国に病院の師長として派遣された私は、【偉い人】として接待されたんですが、
その食事は、お米は食べ放題で、おかずは具なしのカレーでした。

そんな食事を続けた結果、私は栄養失調になりました。
蚊に刺された跡が治らなくて、一年以上ジュクジュクしていました。

ところが現地の人たちは、全然栄養失調なんかじゃありませんでした。
長い間その食事で暮らしているので、体が適応しているんです。

もう一つ私の体に起こった変化は、アトピーが治ったことです。

モルディブに行く前はものすごいアトピーだったのですが、
モルディブで栄養失調になってアトピーがすっかり治ったんです。
現代医療、現代栄養学をもってしても私のアトピーは治らなかったのに
飢えたら治ったんです。

それ以来、現代栄養学というのは、今の経済仕組みに合わせた
栄養学だと思うようになりました。


また、それまでの私は「現代医療は人を救う」と信じていました。
それで看護師を志し、途上国に行ったんです。

ところがそうじゃなかった。
診察して、診断を付けて、それに対して処方箋を書いて、
「この薬を買ってきてください」
と言うだけの現代医療は通用しなかったんです。

薬を買えなければ何もできないのが現代医療だったんです。
だから、モルディブの病院ではお金のある人だけしか助けられませんでした。

病院のベッドで寝ることだけはタダだったので薬が買えない子どもやお年寄りが、
そのまま亡くなっていくというのが、病院の当たり前の風景でした。

モルディブには2年間滞在し、人々を助けると思っていた現代医療が
人々を助けなかった
という悔しい思いをして帰ってきました。

それから…
「日本人にとっての伝統食って何だろう」
「お金のかからない医療というのはあるんだろうか」
と考えるようになりました。


命をみつめて~2 つづく




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