とてもイイお話があったのでご紹介します。

助産師/バルナバクリニック(フィリピン)院長
冨田 江里子
(昨年、宮崎おっぱい会が主催した講演会より)


私は26歳のとき、臨床経験わずか4年で、モルディブの地方病院に派遣されました。
3万人をカバーする、結構大きな病院で、私は病院師長とゆう立場でした。

人口も増えているからお産もたくさんある、正常出産なら
私も関わらせていただけるだろうと勝手に思っていました。

20年前の私は
「ほとんどの出産は病院で行われるもの」
「自宅のお産は汚くて母子死亡がいっぱいある」
という先入観をもっていたんですが、
モルディブの妊婦さんは、お産のために病院にはこないんです。

病院には、陣痛が始まって1週間も赤ちゃんが生まれてこない方や、
吸引分娩や促進剤という医療行為がなければそのまま母子共に死んでしまうような、
そういう異常のある方々ばかりが来ていました。

ですから、ほとんどの妊婦さんは自宅で出産していました。
日本的に言うと、衛生状態の悪い環境で出産ていたんです。

そんな中で、お産を見せて欲しいと思っても、なかなか見せてくれる人なんて現れません。
気を許してる人じゃないとそばにいられないからです。

しばらくして1人の妊婦さんとお友達になり,
何とかお産に呼んでいただけるようになりました。

その妊婦さんの家に行って、どんなお産をしているんだろうと思ったら
日常生活の中にお産がありました。
陣痛が始まって出産が目前に迫っても、陣痛が止まると料理や洗濯をしていました。

日常生活の中にお産があると、陣痛が始まっても産婆は何もせず、ただそこにいるだけです。
しかも産婆は接待され、おやつもご飯も目の前に
どっさり置かれているのでそのごちそうを食べながら待っていました。

そして、ある程度陣痛が進んだと思ったら、産婆はお菓子を食べた手でそのまま
出産介助に入ったんです。

その当時、病院の出産というと、外陰部を消毒して、清潔な滅菌の布を敷いて、
看護師は滅菌のガウンを着て、滅菌の手袋をはめる、

というのが当たり前でしたから、
「おばちゃん、今、自分の手を舐めたよね。せめてその手、洗ってよ」
と思いながら私は見ていました。

「きっとこれは産後、赤ちゃんは感染症を起こすに違いない」
「舐めた手を産婦に突っ込んだから、産後お母さんは、産褥熱を起こすかもしれない」
と心配していました。

だから、彼女のために薬を買って、いつでも行けるようにして
「何かあったら呼んでんね」
と言って帰りました。

ところが、それから何日経っても呼ばれませんでした。
おかしいなと思って様子を見に行ったら、母子共にとっても元気だったんです。

どういうことかというと、その土地に合ったやり方をしていれば
多くの人は大丈夫なんです。
だからこそ太古の昔から、私たちの祖先は命をつないでくることができたんです。

当時の私は
「お産には病院が絶対必要だ」
と思っていたのですが、そうではないことに少しずつ気付いていきました。
sinnseijihoumon














命をみつめて~1 つづく…



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